過保護剣士のワルダクミ

 たどり着いた島の中で一番大きな町で、祭りがあると聞いて一番に食いついたのはもちろん麦わら海賊団の船長であるところのルフィであった。

 船長命令は絶対であるが、それ以前に屋台で供されているここらでは定番らしい駄菓子や串焼きなどは興味深いものだったので、船を入江に隠して全員でやって来たこの祭ですこしばかり浮き足立ってしまっている自覚があるサンジだ。

 何しろ錦えもんに頼んでクルー全員浴衣着用なのだ。ナミとロビンの浴衣姿が眩しい。鼻血が出ない程度には免疫が回復していて本当に良かったと思った。これでテンションが上がらない奴は男じゃない。

 

「ナミさん、ロビンちゃん! 中央のほうで花火が打ち上げられるらしいぜ」

「結構お金かかってるのねェ」

「古くから伝わる偉人の誕生日なのだそうよ。その大勢がこの月の生まれなので、まとめてお祝いという事みたい」

「へえー。そりゃめでてェな」

 

 いちごやあんずを飴でコーティングしたフルーツ飴を手渡しながらそう言うと、二人はそれを受け取って、それじゃあよく見えそうなところへ、と歩き出すのでちゃっかり真ん中に陣取ってサンジも歩き出した。二人の両肩に回した手はさすがにすげなく払われたが、それでも隣を歩くことは許されている様子。美人二人が自分の左右。完全に両手に花。鼻の下が伸びまくるのも仕方あるまい。ここは天国かもしれない――

 

「おいコック、金くれ。あのチケットを買えば五軒の屋台で酒の飲み比べができるらしいぞ」

 

 このクソマリモさえうろちょろしていなければ。

 祭での買い食いについては元からナミにこれだけ、と予算を渡されていて、全員分の財布の紐を握っているのがサンジだ。ナミとロビンが欲しがるものならいくらでも買ってあげたいが、マリモについては検討を善処します、という感じである。見ればそのチケットとやら、三千ベリーである。一人分の予算ジャスト。それを許せば、ゾロは他のいい匂いをさせている焼きスパゲティや焼きコーンなんかには手を出せないことになる。今夜はここで食事を済ませるつもりなのだから、酒だけで終わらせるのは料理を作るだけでなく全員の栄養管理も一手に預かるコックとして許可できない。

 

「駄目だ。高すぎる」

「あァ!? 三千ベリーで五軒ならオトクだろうが! 一杯ずつだと八百ベリーだぞ!?」

 

 それは確かに単純計算で行けばお得だろうが、これはそういう問題じゃないのだ。

 

「足りねェマリモ頭でよく計算出来ましたねー! えらいねー! で、一人三千ベリーまでってナミさんがおっしゃったことは頭のどこから消えちゃったのかなー!?」

「足りねェのはてめェの頭だろ! 酒は三千、予算も三千、ピッタリじゃねェか」

「飯はどうすんだよ!」

「酒がありゃいいんだよおれァ!」

 

 いつもどおりの口喧嘩だが、普段以上にムカッとしてしまったのは食事を蔑ろにされたからに他ならない。出会った最初の頃ならいざ知らず、最近は食育が結果を出し始めていると思っていたのに。

 また始まったと呆れ顔のナミを、可愛いなあと思いつつもギャンギャンと言い争いを続けていたら、ひゅうう、と甲高い音が耳を刺した。

 思わず自分も身構えていたゾロもそちらの方へ顔をやると、花火が始まってしまったらしい。せっかく美女二人と花火鑑賞と洒落込もうと思っていたのに、喧嘩の間にナミとロビンはさっさと先に行ってはぐれてしまったようだ。

 

 鬱憤を晴らすべく花火に負けないくらい声を上げようと口を開くと、一人の美女が視界に入って思わず動きが止まった。一度やりあったことのあるカリファというCP9の諜報部員に似たタイプの、いかにもできるオンナ風の女性だ。黒髪をバレッタでアップにして、きちんとした格好で花火を見上げているが、ちっとも楽しくなさそうである。

 サンジはゾロに向かい合っていた身体を彼女に向けなおし、目を細めた。参加している女の子たちがほとんど浴衣を着用している中、一人だけスーツを着ているのも気になるし、べったりというわけではないが少しだけ離れた位置に似たようなスーツの女性が立っている。おそらく護衛か何かだろう。

 そしてもう一つ。その彼女に向けて、敵意を向ける輩が数名。その全員がお面をかぶり顔を見せないようにして花火を見上げる観衆に紛れ、ジリジリと距離を縮めていっている。

 

「おいクソ剣士、彼女……」

「あァ? よそ見すんな! こっちの話はまだ終わってねェぞ」

 

 当然だ。サンジの話だって終わっていない。しかし今はそれよりもレディの危機だ。思った通りお面を被った三人の男が自分の周りをいつの間にか取り囲んでいることに気づいたスーツの女性がはっとした顔をして、護衛の数名も行く手を阻まれている。草履では走りにくいがそれでも人の間を縫うように走り、スーツの女性の前に立ちはだかる。

 

「レディ一人相手に三人掛かりたァ、いただけねェな」

「なんだてめェ!」

「市長派か!? よそ者なら怪我しねェうちに引っ込んでろ!」

 

 市長派とは一体どういうことなのかさっぱりわからないが、自分は美しいレディの味方である。それ以上でもそれ以下でもない。

 なに言ってんだかわかんねェよ、というあからさまな表情が伝わったのか、いいからどけ、とか言いながらジリジリしだしている。すると、サンジが背中にかばった女性が横から身を乗り出した。

 

「B区画の酒屋のジョルジュ。となり町の花屋のティム。住所不定、流しの薬剤師のオースティンね」

「……うぅ……!?」

「お面をしても無駄です。私は市民全員の顔、体型、声を記憶しています」

 

 市長ですから、と彼女が静かに言うと、サンジは少し納得した。この三人は市政に不満のあるグループの面子で、彼女が市長であると知って襲おうとしたのだろう。ちょっと痛い目を見せてやろうと思ったのか、命にかかわる危害を加えようとしたのかはわからないが、正体がバレてしまったことに動揺する程度には覚悟がなかったのだろう。

 しかし、なにもしなかったとはいえ危害を加えようとしたのは明らか。身元がバレた以上破滅だ。その一人がやけになったのか叫び声を上げて懐から何かを取り出し、あとの二人がそれに倣った。

 

「レディ下がって!」

「うわああああ!」

 

 投げつけられたのは液体の入った瓶だった。サンジが女市長をかばいながらそれを蹴り落とすと、瓶が割れて地面に落ちた。立て続けにもう二つが続いて飛んでくる。もう二つは偶然か周到にか蓋が外されており、液体はほぼ飛び出していた。まずい、と女の頭を手で覆うと、瓶がまっぷたつに切れる。

 液体は飛び散りもせず、二人に届く前に地面に瓶が落ちて鼻にツンと来る臭いが届いた。サンジが「おせーよ」と呟くと、かばわれていた女市長ははっとしたように顔を上げてサンジの腕の中から飛び出すように逃げ出す。おそらく三人と同じグループの構成員と思しきメンバーに道を阻まれていた護衛の女性たちが三名を縛り上げ、駆け寄った女市長と何事か話し合っている。

 

「てめェ、いきなり走りだしやがって。話はまだ終わってねェって……」

「あァ? それどころじゃねェのは見て解っただろうが……」

 

 ゾロがこちらにノシノシと歩み寄ってきていたが、その途中で足を止めたのが解った。

 

「……なに泣いてんだお前」

「あァ!? 誰が泣くか! おれが泣くのはレディのおっぱいに顔を挟んでもらった時とオールブルーを見つけた時だけだ!」

「じゃあ何だここはオールブルーかそれとも女の乳の谷間か!? ア!?」

 

 ゾロと向い合って喧嘩の再開を始めようとした瞬間、頬につっと液体が垂れたような感触があった。思わず眉間に皺を寄せてそれに触れると、出処は自分の目のようで。

 泣いていると勘違いされたと思ったが、そういえばなんだか目がシパシパする。何度か瞬きをするとハラハラと涙がこぼれ、泣いていると言われたのは言いがかりでも何でもなかったらしい。

 

「なん、だこれ……?」

 

 涙が逆流して鼻水が出そうで思わずすすると、ゾロがぎょっとした顔をする。そして、その視界が涙以外のことでぼやけたのを感じた瞬間、ゾロの表情が驚愕から怒りに変わった。

 

「馬鹿野郎、そこからどけ!」

 

 腕を捕まれて引っ張られ、つんのめるみたいになる。ゾロにぶつかりそうになったので手を突っぱねたが、その手の指の輪郭すらぼやけて見える。

 

「マリモ。……目が」

「さっきの瓶に入ってたのはなんかの薬だ、草履も脱げ!」

 

 さっき蹴り落としたせいで足にも薬剤がついている。ゾロの切羽詰まった様子に気づいた観客がこの騒動を遠巻きにし始め、人の輪ができた。

 

「だれでもいい、水をよこせ!」

「こ、これ!」

「これも使ってくれ!」

 

 ゾロが叫ぶとその何もかもを従わせるような強い声に、客が手に持っていた水風船や茶などを次々と持ってくる。草履を脱いだ裸足の足にザブザブと水をかけられて、ようやく臭いが消えた。

 ゾロが自分のためにすごく焦っている。目が見えないのがいつまで続くのか。もしかして治らないのか。そんなことに怯える気持ちよりも、それを見られないことを残念に思う自分がいて、サンジは誤魔化すようにはたはたと溢れる涙を手のひらで拭った。

 

 

 

 護衛たちに縛り上げられた三人が言うには、サンジが食らった毒は大したものではなく、この島に自生する花の花粉と、強いアルコールと、一時的に視神経を麻痺させる薬剤を混ぜたものだということだった。

 どうやら市長を誘拐するつもりで、お面だけでは心許ないため顔を見られないようにこの薬を使うつもりだったらしい。しかし、まさか声でまで判別されるとは思っていなかったそうだ。

 メイヤーだと名乗った女市長は、騒動から守るようにゾロとサンジの二人を近くのホテルに誘導してくれた。

 

「あなたのお陰で命拾いしました。本当にありがとうございます、サンジさん。ゾロさんも」

「とんでもない、あなたが優秀な市長だからこの程度で済んだのさ。市民全員を覚えてるってまたすごいね」

「当然のことです」

 

 あなた方のことも覚えましたよ、と笑み混じりの声で言う市長に、サンジはてれてれと笑う。

 サンジの涙は止まったが、視界は完全にぼやけている。明暗くらいはわかるが、物の形の輪郭は全くわからない。

 

「このホテルの最上階の一室を用意させました。どうぞ、目が治るまで療養していらして」

「えっ、そんな。まだ残党がいるかもしれないのに、メイヤーちゃんはどうするの?」

「私もこのホテルに泊まります。今度は護衛もしっかりつきますし、あの三人がアジトの場所を吐きましたから。あとはお任せください」

 

 恩に報いるためにもぜひ、と市長に薦められ、サンジはそれなら、と手を握られて渡された鍵を受け取った。

 

「部屋に行く前に電伝虫を使ってもいいかい?」

「お部屋にもありますし、こちらにもあります。どうぞお好きな方をお使いください。ルームサービスもご遠慮なく使ってくださいね」

 

 ではこれで、と会話を聞くまいとサンジに気を使ったのか、彼女が立ち去っていった気配がする。四苦八苦しながらナミの子電伝虫にかけると、事の顛末を告げる。

 

『中央のほうで騒ぎがあったって聞いたけど、案の定あんたたちだったのね……』

「いや面目ない」

『いいわ。ルフィはルフィでホットドッグ大食い大会で優勝して賞金ゲットしてたし、サンジくんはサンジくんで大物とパイプが繋がった。悪いことばかりじゃなさそうね。重ねて聞くけど目は大丈夫なのよね?』

「ああ、痛みはねェんだ。医者にも見てもらったが、角膜に傷がついてるわけでもない。目ェ閉じて安静にしてろって」

『そう、ならお言葉に甘えちゃいなさいよ』

 

 過激派の残党は今のところ全員捉えられたわけではないこと、もしかしたら警戒している自衛団や海軍が出張ってくるかもしれないので、と注意を促すと、あと、となんでもないことみたいに付け加える。

 

「できたら、誰か迎えを寄越してくんねェかな。マリモがこっから一人で祭りの会場に戻れるとは思えねェし」

『え? サンジくん目が見えないんでしょ? 一人じゃ危ないわよ』

「大丈夫だよナミさん。おれには見聞色があるし。えーと、ここァなにホテルだろ。おいマリモ」

 

 お迎えに来てもらえ、と子電伝虫を渡すと、手の上が軽くなった。見聞色で部屋の位置がわかるわけもないのだが、まあ適当なボーイを捕まえて案内させればいいだろう。

 立ち上がって、渡された鍵のキーホルダーを指の腹で撫でる。金属製のキーホルダーの表面には部屋番号と思しきものが刻まれているのを指先に感じた。それがどんな数字かはじっくり探らなければわからない。だが、それを悟らせないようにゾロのそばを離れようとしたら、腕を掴まれた。

 

「迎えはいい。お前はコックが下手打ったことをルフィに伝えとけ」

「あァ!? てめェ何……!」

『はいはい。サンジくんのことよろしくね、ゾロ』

「ナミさ、ちょっ」

 

 ガチャ。と、子電伝虫が言った。

 かけ直そうと子電伝虫を奪おうにも、伸ばした手は逆にうまくいなされて、体ごと持ちあげられて肩に担がれてしまう。てめえこのやろう、と大暴れしてもびくともしない身体は彼の努力の賜物と、少しは自分の食事も担っているはずだ。

 

「落とされたくなきゃじっとしてろ」

「落とされてェから暴れてんだよ!」

「あんまり暴れると浴衣が乱れててめェのアホみたいなパンツが丸出しになるぞ」

 

 人のハート柄トランクスに対してアホみたいなパンツとはまた失敬な話であるが、その言葉はサンジをおとなしくさせるには十分な効力を持っていた。

 パンツ丸出しもいただけないが、浴衣には下着はNGと聞いていたから、履いていないのだ。ケツ丸出しはもっといただけない。

 だからと言い訳をするつもりもないが、そのせいで市長を守ろうとした時の動きに精彩を欠いたような気もする。

 おとなしくなったサンジに気を良くしたのか、よし、とゾロが移動を始める。目は見えないが大勢から注目を浴びていることは判る。せめて、ゾロが部屋まで迷わずにたどり着いてくれることを祈るばかりだった。

 

 

 

 

 

 迷わないはずがなかった。

 肩に米俵よろしく担がれたまま、自分の部屋に向かうメイヤー市長ともすれ違って、結局ドアの前まで案内された。最上階には一室しかないのにどうやって迷うのかと逆に心配そうにされた。

 そんな恥ずかしいことがあったにも関わらずなんでもないみたいに部屋に部屋に入ったゾロは、ベッドにサンジを投げ落とす。

 

「うひァ!」

 

 目が見えない分、身構えてもいなかったしどこまで落ちるか解らなくて変な悲鳴を上げてしまい、ガバっと起き上がってあぐらをかきながらゾロがいるであろう方向に怒鳴る。

 

「何しやがるテメェ! 舌噛んだじゃねェか!」

「あァ? どれだ、見せてみろ」

「な、あがァ!?「

 

 とりあえず言っただけの文句を本気で取られて、顎を掴まれて口を開かされた。驚きのあまり固まってしまった。

 

「血は出てねェ」

「はなへこのアホッ! 出てたところでてめェに何ができるってんだこのドアホ!」

 

 思わず振り払うと、頭をばしばしと撫でられ……? 叩かれ……? て、とんでもないことを言われる。

 

「舐めてやるくらいはできるぞ」

「ふっ……ざけんな!!」

 

 一体何なのだろう。心臓が胸を殴りつけてきているみたいに痛い。ゴムゴムのガトリングとかそんな感じで。

 目が見えなくて弱った自分をからかうつもりなのはわかっているのだが、攻撃の手が緩い。というか、やられる前に殺れというつもりで噛み付く自分が軽くいなされているだけのような。

 なんだか噛み付けば噛み付くほど心臓に悪そうなので、もうじっとしていることにした。

 横になって目を閉じる。次に目を開けた時には目も見えていて、ついでにゾロもいなくなっていればいいと思うのに。

 

「ルームサービス何頼んでもいいっつってたな。三千ベリーぽっちをケチるコックの目が見えねえうちにメニューの一番高ェやつ頼んでやるか」

「おいそういうのは頭ン中で思うだけにしろ」

 

 噛み付かなければ噛み付かないで絡まれる。サンジがそういうのを放っておけないと知っていてやってくるのだからたちが悪い。

 

「メニュー貸せ! 高けりゃうまいだろうが値段がすべてってわけじゃねェんだよ」

「見えねえだろが」

「おめーが上から読め。このおれが酒だけ注文させるわけねェだろ」

「だからおれァ酒だけでいいっつってんだろ?」

 

 言いながらもゾロが素直にベッドにあぐらをかくサンジの正面に座った。ベッドが沈んだのと、光が少し遮られたので判る。どころか、目を開けようとするサンジのまぶたを掌で覆ってきた。

 

「読んでやるから目ェ閉じてろ。バンダナで目隠ししてやるか?」

「……くさそうだから嫌だ」

「洗ったばっかだ」

「お前の洗ったばっかりは風呂にしろ洗濯にしろ信用できねェんだよ」

 

 閉じとくから離せ、と顔を背ける。あんまり接触されるとドキドキしているのがバレそうで嫌なのだ。

 

「あー……ザキヤマ十五年だろ……メッカラン七年……」

「バカ先に飯だ飯! ページめくれ」

「別におれァ腹減ってねェ」

 

 またこいつは、と怒りに任せ口を開こうとすると、頭をかく音を立てて呟いた。

 

「明日になりゃ船で食えるんだろ。じゃあいらねえ」

 

 とか何とか言って、結局サンジの言うことを聞かずに電伝虫で一番高い酒をオーダーしてしまった。

 言葉を失ったサンジに気づいているのかいないのか、ははァなるほど、となにかわかったような声を上げる。

 

「てめェが腹減ってんだろ。果物なら積んであるぞ。みかん食え」

「そ、ういうわけじゃ」

 

 ねェけど、とゴニョゴニョしてしまう。なんだか頭にうまく血とか酸素とかが回らないみたいで、舌が回らない。

 ゾロがなんだかもぞもぞ動いたと思ったら柑橘の臭いがふわっと鼻に届いた。視覚が封じられているせいか、嗅覚が鋭敏になっているのかもしれない。

 

「ほれ」

「んぐ」

 

 なんだか房を口に押し付けられた。柑橘は柑橘だが、一房がやけに大きく薄皮が分厚い。

 

「これ薄皮剥いて食べる種類じゃねェか」

「軟弱なやつだな」

「別に食えなかねェけど」

 

 こういう柑橘の薄皮はいつまでも口に残るので、実をデザートに出すときは全部剥いて、硬い外皮と一緒に煮てマーマレードにしてしまう。自分が文句を言いたいだけなのか、自分の目が見えないからか妙にむず痒いほど優しいゾロの許容範囲がどこまでかを測りたいのかわからなくなりつつ、噛んでも噛んでも細かくならない薄皮を無理やり嚥下する。

 親切でやったことに文句を言われてさすがに閉口したかと思ったが、ぴちゃっと果汁が顔に飛んできて、思わず目を開けそうになる。

 

「……薄皮なんざ剥いたことねェからわからん。ほれ」

 

 次に口に入れられたのは、崩れたか握られて縮んだかしたのだろう、さっきよりは大分小さい欠片になった薄皮をむいたものだった。大粒の果肉がぷちぷちとはじけ、喉を潤す。

 雛のように果物を与えられながら、ぽそっと尋ねる。

 

「お前、なんか、おかしいぞ」

「……なにがだよ」

「ここにいる理由が解らねェ。おれの財布持って祭に繰り出して三千ベリーの酒でも何でも飲めばいいのに」

「てめェの目が見えねェからだろ」

 

 それはもちろんそうなのだろうが、それにしては過保護がすぎる。

 自分たちの関係性から言えば親切とか過保護とかは一番遠い位置にあるべき言葉のはずだ。それなのに否定をしないということは態度がおかしいということに自覚があるということで、そのせいでサンジがこんなにどぎまぎさせられて、そしてそんな自分ばかりが観察されて、それをやっているゾロの姿を見られないなんて、ずるい。

 サンジが納得していないのがわかったのか、ゾロが少し黙って、柑橘の果肉を口に押し付けてきた。口を開くと、中に押し込もうとする指が必要以上にサンジの唇に触れる。それどころか、下唇を軽く摘まれた。

 

「好機は逃すべきじゃねェと思った」

 

 好機とはなにか。自分と二人、普通じゃ絶対取れないようなスイートルームにいることが、好機か。

 絆されそうになってしまっている自覚があるサンジには、それを聞く勇気がない。

 というか、こんな、スキンシップというには若干過剰ではあるが、それでもただ触れられただけ。それで参ってしまうほど、もともとやられていたのだ。ほだされるも何もあったものじゃない。

 なのに、違ったら。そうじゃなかったら。気づいてしまったこの思いをどうすればいいのかわからない。

 

「……ベタベタだな。落ち着いたら風呂に入れてやる」

 

 薬もまだ身体についてるかもわかんねェからな、と唇に触れられたまま囁かれて、びく、と震えるように頷くしかできない。

 微妙な沈黙が流れた時、ノックの音が響いた。さっき頼んだルームサービスだろう。口から手を離され、ベッドが沈んでいた感覚がなくなり、少しの反発を感じてゾロが立ち上がったことを知る。

 掌で口を覆うようにして拭うと、頬がものすごく熱い。もしかして、意識して真っ赤になってしまっているのではないか。死ぬほど恥ずかしい。

 

 動揺しまくっているサンジだが、ふと、ドアの向こうの様子がおかしいことに気づいた。

 頼んだのは酒だけだ。それを運ぶのに人数はいらないはず。だが、ドアの向こうで数名が待ち構えているような息遣いを感じる。

 

 ゾロ、と声を上げる前に内側からドアが開かれ、にわかに騒がしくなった。

 

「出てこいメイヤー! 奥にいるのはわかっているぞ!」

「拘束した同士三名を解放してもらおう!」

 

 どうやら、ルームサービスを運んできたホテルの人間を装って、今日ひっとらえられた連中の一派が乗り込んできたらしい。これだけ高級なホテルのフロントが、客の、しかも要人のプライバシーを無視して部屋番号を教えるはずがない。一番いい部屋だから市長が泊まっているはず、くらいの勢いだけで突っ込んできたのだろうか。それにしては少し嫌な予感がした。

 

「あの女ァ、ここにゃいねェよ」

「嘘を言うな! 我々はあの場所にいて、全てを見ていた! お前があの女のボディーガードだろう!」

「助けたのはおれじゃねェが……まァ、本音のところを言やァ、待ってたぜ。ここにいりゃてめェらがやってくるのは解ってた」

 

 ぎく、と肩が跳ねる。

 連中がここに来るのが解っていたとは。

 ゾロが逃すべきではない好機と言ったのは、このこと、か。

 

「命まで取りゃしねェが……」

 

 ちっとばかし、痛い目はみてもらうぞ、と言ったゾロの顔なんか、見なくても想像できる。

 予防線を張っていたとはいえ、すっかり甘いような気分に浸っていた気分が一瞬で下降したけれど、でも。

 侵入者がバッサバッサと倒されていっているのだろう音を聞きながら、その姿も見たかったなあ、と、浴衣の袖で果汁のついた口を拭ってサンジは深く息をついた。

 

「お二人共、大丈夫ですか!」

 

 多分、ルームサービスを運んでくるべきだった本物のボーイが市長を呼んだのだろう。護衛らしき数名の足音を伴って、開いたままのドアの前に駆け寄ってくる。

 サンジもベッドから降りてすり足で出入り口に向かった。途中何かを蹴ったが、どうせ侵入者共の頭か何かだろう。気にせず進む。

 

「なァにが大丈夫ですかだ、いけしゃあしゃあと」

「くぉら! レディになんて口聞きやがる!」

「な、何の話ですか、私はただ、お二人が無事でよかったと」

 

 出会ってからこっち、ずっと張り詰めていたような声音だった女市長の声が震えた。

 その反応だけでもう十分だとサンジは思ったが、ゾロはそこに容赦などしなかった。

 

「この部屋、もともとてめェが取ってた部屋だろう。どこに泊まるつもりなのか連中にバレてんのを、あの三人の尋問で知ったんじゃねェか? そんならここにおれらをあてがって、連中を一網打尽にさせりゃいい。最悪おれらがやられてもてめェらは痛くも痒くもねェからな」

「そんな、ことは」

「祭りの会場に近ェホテルだ。おまけにこんだけの部屋。いくらホテルに顔が利いたとしても、書き入れ時にちょっと助けられた程度の奴に提供するには急な予約すぎるだろうぜ」

 

 確かに、フロントにいた時も人の目を多く感じた。おそらく満室だったのだろう。この部屋をサンジたちに譲ったメイヤー市長がいた部屋は、おそらくもともと取ってあった護衛のための部屋なのだろう。

 彼女らの沈黙は、雄弁にゾロの指摘が正しいと語っていた。

 

「コックは最初から気づいてたと思うぞ。女のことに関しちゃあ、気味が悪ィくらい敏いからな」

 

 いえすいません、お前のことばっか考えてて気づいたのはほんのつい先程です、なんてことは死んでも言いたくない。

 しかし市長も護衛も何も言わない。もういい、とサンジが口を挟もうとしたが、沈黙を破ったのはサンジではなく電伝虫だった。

 

「プルルル……」

「はい」

 

 答えると、電伝虫の野太い呼び出し声が可憐なものに変わった。

 

『サンジくん? 調子はどう?』

「ナミさんっ! おれはいつでも絶好調だよ」

『ならいいけど。えーと、だいたいの事がわかったわよ。どうやらこの辺を仕切ってる女市長、男に対する差別がひどいみたい。自称レジスタンスの構成員は全員市政に不満のある男性。サンジくんがされたこと、ルフィに伝えたらもう怒っちゃって手が付けられなくなって大変だったわよ。自称レジスタンスにはいいお灸にはなったと思うけど』

『サンジーっ! 目ェ治ったかー!』

 

 その市政を行っている張本人がぎくりとして肩を緊張させたのが衣擦れの動きでわかる。

 本人が聴いているとは知らないだろうナミの容赦無い解説にかぶせるように聞こえた声は船長のものだ。見えないが、電伝虫の顔つきが代わり、目の下に傷が浮かんでいるのだろう。サンジは少し笑い、いや、と答えた。

 

「明日にゃ治るってよ」

『ナミも人が悪ィんだ。サンジの目が見えなくされたっつーからおれすげェ腹立ったのによ、すぐ治るならそう言えよな!』

『お、おれだってすっげえ心配したぞ! おれが絶対治してやるって思って、使われた薬品もすげえ調べたのに!』

「ナミさんたら……」

『あら。あたしはゾロの意図を酌んだだけよ』

 

 ゾロの意図。

 コックが下手を打ったことを伝えておけ、といっただけだ。ただの告げ口だと思っていたが、自分の負傷を知ったルフィ達が奮い立って連中のアジトを叩くだろうという意図だった、とでも言うのだろうか。

 顔が見えないのでわからない。しらばっくれるような顔をしているのか、それとも勝手なことを言っているな、という顔なのだろうか。

 

 どちらにしても、ルフィにアジトを叩かせ、自分はここで襲撃者を叩き伏せるつもりだったのは間違いない。ゾロがここに残る理由はもうないだろう。

 

『使われた薬から見ても、直接目に浴びたんでなければ大丈夫ってのはうちの優秀な船医のお墨付き。安心してゆっくりしてなさい』

「ナミさんたちは?」

『ルフィがお祭りに戻るって。今度は焼き鳥大食い大会よ』

『サンジ、すげーぞ! 色んな種類の焼き鳥があってな、すんげーうまほーなんだ! いろんなトリの肉で競争すんだ』

「へェ」

『珍しいのも食えるんだと! 水水鳥とか巨大カモメとか、あと食うとこなさそうだけどスズm』

『あーもう、うるっさい! あんたが割り込んでくると話が終わんないでしょ! こっちからかけてんだから代金もただじゃないのよ!』

 

 気分はすっかり落ち込んでいたはずなのに、電伝虫の向こうのてんやわんやを想像するだけで笑みが浮かぶ。

 ゾロもどうせこの通話が終わったらここから出て行くんだろうし、今夜ひと晩豪勢な部屋でひとしきり落ち込んで、それでまたこの大好きなクルーたちの前にいつもの顔で姿を現そう。

 そう思ったのに。

 

「じゃあ、明日直接船で合流ね! ゾロも忘れずに連れて帰ってね」

「え、ちょっとまってくれナミさん。ゾロは……」

 

 そっちに合流したほうが。

 そう言おうとしたのに、通話は切れてしまった。

 ふう、とため息を付いたが、話はまだ終わっていない。市長が残っている。

 

「メイヤーちゃん、もういいんだよ。君は善意でおれ達にこの部屋を譲っただけだ、そうだろ?」

 

 ただのマリモの言いがかりだよ、ごめんね、そう言うと、ゾロが不満そうにオイ、と口を挟んでくる。

 いいから黙ってろと足を踏むと、絞りだすような声が市長の口から漏れた。

 

「……私、男性が嫌いなんです」

 

 敏腕市長、鉄の女と呼ばれ、妬みや嫉みは女からよりむしろ男からの方が多かった。

 小学校の頃から記憶力が良く、勉強もできた。女のくせに生意気、というのは耳にタコが出来るほど聞かされ、それでも強くあろうと生きてきた。

 けれど。

 

「あんな風に、私を普通の女みたいに守ろうとするあなたが、許せなかった」

「メイヤーちゃん……」

「それもよ。私をちゃん付けで呼ぶなんて。馴れ馴れしい」

 

 ご、ごめん、とつい謝ってしまう。が、ゾロがなにやらゴソゴソ物音を立てながらも白けたような声で言った。

 

「要するに、コックにトキメいちまった自分が許せねェからそれを否定しようとして嫌がらせしたんだろ」

「う、っい、嫌がらせなんかじゃ、ただ、自分の甘さとの決別を」

「おら護衛ども。突っ立ってねェでころがってる連中とてめェらの市長連れてけ。もうどっちにも用はねェ」

 

 ゾロの口からトキメキとかその辺の単語が出てきたことにも驚くが、それが図星っぽいのがまた驚愕だった。モテ期か。モテ期なのか。

 言葉をつまらせ途切れ途切れに言い訳をする市長に構わず言い放つと、ズルズルと引きずるような音が聞こえてきた。

 

「……自分のやってきたことが悪いとは、今でも思わないけれど。あなたを利用しようとしたことは、謝ります。ごめんなさい」

「いやァ、そんな」

「そして、ありがとうございました。あなたの、顔と、声……忘れません」

 

 そう言って、彼女は立ち去っていった。声の向きから察するに、最後らへんのセリフはどうもゾロに向って言っていた気がする。

 あれ、彼女は自分に気があったのでは……そんなふうに思いつつ、ばたんと閉じる扉の方向に手を振ると、ゾロはため息を吐いた。

 

「ありゃ、ただの惚れっぽい処女だな」

 

 多分ゾロのことをポーッとした顔で見ていたに違いない。モテ期終了のお知らせだ。

 ぐぬぬ、と呻いてサンジは再びすり足でベッドルームに戻り、ドサッと横になった。ゾロが置いたままにしておいたらしい柑橘の皮を腹の下に敷いてしまったが、もうなんの感慨もない。ただ眠りたい。眠っていろいろなことをなかった事にしたい。ゴロンと仰向けになって皮を避ける。

 部屋のドアが閉まる音がしたが、しかしゾロが出て行った様子はない。

 

「いつまでいんだ。てめェもさっさと祭へ行けよ。三千ベリーなんでも使ってたらふく安酒飲んでろよ」

「何言ってんだ。ルームサービス来てたぞ。廊下に酒の乗ったワゴンが放置してあった」

「そうかよ。勝手にしろ。おれはもう寝る」

 

 そりゃこっちは一瓶十万ベリー越えの良酒だ。三千ベリーで何倍も飲める酒よりは希少価値が高いだろう。

 ここにいる理由があるのは結構なことだが、寝てしまえば自分に構う理由はもうないだろう。

 

「あ!?」

 

 しかし、それに返ってきた半ギレの声に、サンジは思わずビクッとした。怒られる理由はない、はずだが。

 ぎし、とベッドの沈む感じがして、頬を掴まれておちょぼ口にされる。何しやがるととっさに出た声がやけにか細くなって誤魔化すように咳き込んだ。

 

「てめェ、風呂に入れるっつったら頷いたじゃねぇか!! 約束を反故にする気か!?」

「やくそ、く?」

「忘れたとは言わせねェ。ベタベタすっから風呂に入れるっておれは言った。てめェはぜってー頷いた!」

「いや、それは、そだけど、約束っつーか」

「今更怖気づいたか、ア!?」

 

 語気の荒いゾロに、サンジは恐る恐るおちょぼ口のまま尋ねる。

 

「なんでそんなムキになってんだお前……」

「ムキになるに決まってんだろ。せっかくてめェを構い倒す好機が来たってのに、誰が寝かせるかっ」

「え。……あ? 好機って、あの連中を一網打尽にするチャンスって意味、だろ?」

 

 そう思ったからこそサンジだってメチャメチャに落ち込んだというのに。とんでもない睦言を聞かされたような気がして、思わず言い返したが、わけわからん、みたいな返事をされる。

 

「はァ? そんなもんついでだついで。奴らが来るのを狙ってたのは、服のためだ」

「……服」

「おれァ絶対てめェの浴衣を脱がすつもりだったからな。錦えもんの術は脱いだら消えるだろ。マッパで帰るわけにも行かねぇから、二人分な」

「追い剥ぎしてたのかよ!!」

 

 どうやらゴソゴソやっていたのはサイズの合いそうなのを剥いでいただけらしい。護衛の女性らが、居たはずなのに一言も発さなかったのは、半分くらいはゾロの奇行に引いていたからでは……と思い当たる。

 何も言わないでいると、そういうわけだから風呂、と抱え上げる。あわわわ、と慌てるサンジに、ゾロがポツリと言った。

 

「あの女の気持ちもわからんでもなかった。てめェにトキメくなんざ冗談じゃねえっててめぇに八つ当たりした時期もあったしな」

 

 トキメキ、とオウム返しをしてしまったが、そういうのにはさんざんゾロにちょっかいをかけまくった自分にも心あたりがありまくるので閉口するしかない。

 それに、視界の自由が奪われているのに、ゾロの胸に抱かれてしまえば不安なんて微塵も感じない。胸が温かい。これがトキメキでなければなんだ。恋でなければなんだ。

 

「けど、認めちまえば悪かねえもんだと知った。そんな風に思ったとこでてめェが目ェ見えなくして弱ってんだぞ。付け入るための悪巧みくらいい企てて当然だ」

 

 ふてくされたような言い方に、プッと笑いが漏れた。

 すると、普通の部屋よりも少し湿気の多い場所、おそらく風呂場の前の脱衣所にたどりついてそっと降ろされ、頬を摘まれる。

 

「やっと笑いやがった。おとなしくおれに世話ァされる気になったか」

 

 そう言われ、サンジは薄く目を開ける。医者二人が言ったとおり、徐々に回復してきているみたいだ。ゾロの輪郭とか、色とか、少しだけ見えるようになってきた。

 

「どんな顔でんなこと言ってんだか、見えねェのがすげェ残念だ。お前ばっかり見えてて不公平じゃねえか」

 

 手探りで頬をつまみ返してやると、掌に甘えるようにゾロが頬をすり寄せてきた。ブワッ、と全身を駆け巡る血がふわふわの綿毛になったみたいに内側がくすぐったい。

 

「見えねぇのを良い事にすげェ緊張した顔してるに決まってんだろ。こっちは意を決して惚れた相手口説いてんだぞ」

 

 顔がじわじわと赤くなってきているのが判る。口説かれて嬉しい、というのが顔に完全に出てしまっているんだろう。

 恥ずかしすぎて、もう一度目を閉じて頬に触れた手でゾロの両目を覆う。指先に傷が触れて、それをそっとなぞった。

 

「おい、見えねェ」

「いいからそのまま目ェ閉じろ」

「あんでだよ」

 

 文句を言いながらも言われるままにゾロの睫毛が掌をくすぐったので、満足して両手でゾロの頬を両手で包み、位置を探る。

 

「キスの時は、目を閉じるのがマナーだからだ」

 

 

 

 

 その後は、とにかくいろいろあった。

 浴衣の下にアンダーウェアをつけていないことに当然の如く気づかれて、すぐ隣りの風呂に辿り着く前に色々あったり、風呂にたどり着いてからもいろいろあったり、ベッドに戻ってからもいろいろあったり、ぐったりと気を失うように眠って、朝の光がカーテンの隙間から差し込んで、二人がほぼ同時に目をさまして、目が見えるとサンジが笑ってからもまたいろいろあった。

 

 

 しかし、さすがの高級ホテルスイートである。防音加工された壁がとてもいい仕事をしたので、そのいろいろについては二人だけの秘密だ。

リリース日:2014/10/05

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